看護事故の原因
① 患者の状態の評価ミス
たとえば、リハビリ中の患者の自立度評価の甘さにより、まだ単独歩行が無理な患者を一人で歩かせたような場合。
② 必要な看護援助を行わなかった
たとえば、術後はじめてのトイレ歩行に付き添わなかったような場合。
③ 環境の問題
ベッド棚の上げ忘れ、廊下にこぼれた水の放置。
④ 積極的アプローチが裏目に
寝たきりにならないように、ベッド上に臥床させず、車椅子移動や座位保持をはかる途上での事故。
⑤ 看護師の観察のあやまりによる症状発見の遅れ、または誤判断によるもの
この中には、患者の訴えを、先入観をもって聞いたために、正しくとらえきれなかったり、がまん強い患者が訴えなかったために、他疾患の併発を見抜けなかった例、出血の徴候を軽視して手遅れになった例、肝性昏睡の予測かできなかったことなどの事例がある。
生活行動援助の過程での事故
浣腸・摘便による急変
誤飲による死亡
体位変換による症状悪化
医療機械・器具に関する事故
これは、人工透析や人工呼吸器に関するもので、年々増加していると思われるが、詳細なデータはまだない。
与薬事故
恐らく、日常出会う事故の中ではもっとも多いのではないだろうか。
〈ミスの種類〉
薬違い、量間違い、人違い、方法の誤り、重複投与、投与期間ミスなどがある。
〈看護師側の問題〉
観察・判断のあやまり、知識不足、思い込み、見間違い、聞き間違い、技術の未熟、書き違い、失念など。
〈システム上〉
確認のシステム・管理ミス、人員不足、チーム体制上の問題などが、その原因として挙げられよう。
看護の安全性の問題は実に奥が深い。看護師の技術、意識、熟練度、基礎学力など、看護師の個人的な面からの切り口もあるし、看護管理的な面やチームワークを含む体制面からの検討、看護基礎教育や現任教育の面からの検討も必要であろう。また、療養環境(建築やスペース)といった点からの分析もできる。
いずれの視点から見るにせよ、根本は患者の生命の安全への深い洞察と、自己の職務に対する認識と責任の自覚が大切である。そして科学的で広い視野からの分析を怠ることなくつづける必要がある。