ウェブサイト利用のメリット

 マーケット・スペース(ネット上の市場)か既存の市場かを問わず、現代のマーケティングにおいてはブランドの果たす役割がますます重視されてきています。ブランドとは、単なる名前やシンボルマーク、記号ではなく、特定の顧客と企業、製品、サービスを根本のところで結びつける信頼をもとにした一連の関係と行為を意味しています。また、ブランドを企業の資産としてとらえたブランドエクイティという概念も一般的になっています。ブランド研究の第一人者のデイビッド・アーカーは、ブランドエクイティの要素として、ブランド認知、ブランド連想、ブランドロイヤルティ、知覚品質があると説明しています。

 ブランド構築の一般的な段階についてはさまざまな考え方が存在していますが、ここでは次の四つの段階をブランド構築のプロセスと考えたいと思います。まず最初の段階は、認知です。ここでの認知とは、そのブランドの顔見知りであるということであり、そのことは、特定ブランドの名前をカテゴリー名から思い出すことができ、そのブランド名を聞いて製品やサービスの特性を思い起こすことができることです。次はそのブランドとの親密さです。特定製品やサービスの特徴的な点や使用経験などを思い起こすことができるかどうかで測定されます。三番目は肯定的なイメージです。これは、企業のマーケティング活動によって構成される、強く、ユニークで、好ましく感じてもらえるブランドの一連の連想を示します。最後の段階は、顧客による製品やサービスの購入です。しかしこれは、企業と顧客との関係の始まりであり、ブランド構築のプロセスがここで終わるわけではありません。

 従来のマスメディアを用いたブランド構築は、個々の顧客との関係を日常的に維持したり、深めていくという関係性の深い構築には向いていませんでした。一方、インターネットをもとにしたブランド構築においては、データベースや情報技術をベースにしたより精度の高いセグメンテーションを実現するだけでなく、インタラクティブな環境を提供することでより深い関係をターゲット顧客と築くことが期待されています。今や大手のほとんどの企業が、マスメディアだけに頼ることなく、ウェブへの積極的な投資を行っています。

 またウェブは、マーケット・スペースに新たな強力なブランドをいくつも築いてきました。たとえば、ポータルサイトのヤフー、エキサイト、インフォシークや、インターネット・ショッピング・モールの楽天、またインターネット専門の小売業であるアマゾンなどがそうです。これらの企業は、ブランドエクイティの要素を十分に満たしていると考えられます。

 さまざまなコスト削減-効率性

 情報を有効に活用することで戦略的な事業機会を発見し、競争優位性を築くことが有効性の側面とすると、効率性とは少ない経営資源の投資によって最大限の効果を引き出すための工夫であり、インプットに対するアウトプットの比率として測定されます。

 企業はインターネットを利用することで、さまざまなコストを削減することができます。これまで印刷物にして顧客に配布していたマニュアルや顧客サポート用の文書は、今ではウェブ上で提供することができます。たとえば、シスコシステムズは、そのことで以前に比べ年間約五億ドルもの費用を削減しています。印刷や発送にかかる費用だけでなく、内容の修正も容易に行うことができ、むだな在庫を抱えておくような必要もありません。

 また、これまで顧客との対面や電話などを通じてのサービスの提供に多額の費用を要していた業務も、ウェブを通じてほとんど費用をかけず、しかもカスタマイズされた対応を実現することができるようになりました。銀行の業務が典型的な例です。顧客にオンライン・バンキングの利用を勧めることで、銀行は各支店窓口での取り扱いはもちろんのこと、ATMの設置運営よりはるかに効率的に顧客にサービス提供できることを知っています。ある調査によると、窓口業務に比べ、ウェブ上での取引にかかる金融機関の費用は100分の1まで下がっています。

 ソフトウェアなど情報産業の企業では、そのデジタル製品はもちろんのこと、幅広く顧客へ の対応にウェブを利用しています。今では、各種のマーケティング素材に加え、製品のパンフレット、カタログ、トレーニングプログラムのスケジュールやその実施、コンサルティング情報、最新の技術情報、料金表、製品保証情報など、各種のサービスや情報を人手を介さずに顧客が利用できる環境が提供されています。

バリューチェーンに付加価値-有効性

 インターネットによって企業と販売店が結ばれることで、寄せられた注文の即時の確認ができるようになれば、顧客の満足度を高めることが期待できます。在庫にない商品については、いつ入荷できるかその場で確認したり、あるいは顧客の要望にあった他の商品を的確に推奨することも可能ですから、販売のチャンスを損なうことなく顧客に対応しやすくなります。

 このようにインターネットを利用することで、企業のバリューチェーンに新たな付加価値が生まれます。企業は顧客情報を組織全体で共有し、的確に個々の顧客のニーズに対応することを実現し、また流通業者や、供給業者、販売やマーケティングのパートナー企業に対しても必要な支援を以前に増して提供することが可能になりました。その結果、必要な部品や製品を適切に購買でき、在庫を圧縮し、さらに市場の変化に迅速に対応した製品やサービスを実現できるようになりました。これらはすべて、企業にとってもっとも重要な資産である顧客の満足度を高め、顧客価値の向上につながる活動といえます。

提供企業からの収入

 企業がウェブから直接収益を得るための利用法には、大きく二つの収益源が考えられます。一つはウェブサイトのユーザーとのビジネスを期待する他の企業から収益を得る方法と、個々のユーザーからの直接の収益を上げる方法です。

 インターネット広告の掲載は前者のもっとも代表的な手段です。従来のバナー広告だけでなく、検索用語と連動した広告などいくつもの方式のインターネット広告が登場しています。