自治体もとりくむ骨粗鬆症

 

 

 日本における健康づくりの歴史は、第二次大戦中の国民体力づくりにはじまり、一九六四年の東京才リンピック後の健康・体力づくりのムードヘと移っていくが、これらはいすれも継続的に展開されたものではながった。現在の国や自治体の骨粗鬆症対策は、一九七八年からの第一次国民健康づくり対策の流れの中で開始された婦人の健聿づくり推進事業に上乗せして、一九九四年に骨密度検診が加えられたのを起点とする。

 

 一方、四〇歳以上の国民はだれでも、老人保健法にもとづく健康診査を市町村の保健センタ一や保健所、医療機関で受けることができるが、これら老人健康診査のうち総合健康診査を実施している市町村では、一九九五年からそれに骨密度検診を追加しておこなえるようになった。以上二つの事業が、国から市町村に向けて、骨粗鉱症対策としておこなうようにと指定した内容であるが、これにしたがうと一八歳から三九歳までの女性、そして四〇歳、五〇歳の女性が骨密度健診の対象者となり、それ以外の人たちは公的には検診を受けられなくなる。そこで全国の多くの市町村は、独自の骨粗鬆症対策もおこたっている。

 

 国や自治体の骨粗鬆症予防対策では、骨粗鬆症の有無を検診して、正常者にはかんたんなレクチャ一を、要指導者には栄養・運動指導を、要精検者には医療機関へ紹介する、といった体制をとっているのが一般的である。このように、自治体や行政サイドが骨粗鬆症といった一疾患について対策をとるのは、東京都の健康に関する世論調査でも、四〇~六〇歳代女性の八〇%以上が骨粗鬆症に関心をもち、それらの女性の五〇%以上が骨密度検診を望んでいることなどによる。

 

 平成時代になって、全国的に骨密度検診を軸にした骨粗鬆症予防対策が本格化しているが、それ以前からおこなわれている事業のなかの重点健康教育の一つにも、骨粗鬆症予防があげられていた。骨粗鬆症予防には、昭和の終りごろから行政が並々ならない力を注いできたことになる。六事業とは、四〇歳以上の国民に健康手帳を交付し、健康相談、健康教育、訪問指導、機能訓練、および健康診査をすることをいう。そのうちの健康教育では、骨粗鬆症のほか、乳がん、肺がん、大腸がん、糖尿病の予防などを重要な八項目に指定している。

 

 一九八九年には、高齢者の福祉を保健とともに充実させるために高齢者保健福祉推進一〇ヵ年戦略にゴールドプランが打ちたてられたが、その柱の一つに「寝たきりゼロ作戦」がある。これはいろいろな手法を使って、寝たきり老人の新たな発生をゼロにしようとする施策であるが、その一環として疾病の予防、とりわけ脳卒中と骨折の予防が重視されている。また近年、「成人病予防対策」を「生活習慣病予防対策」に切りがえて、生活習慣を見直して健康的なニー世紀を迎えようとする気運がもりあがっている。この施策はまもなく「健康日本21」の呼称で展開されるだろうが、食生活の偏りにより生じる骨粗鬆症への対策も、生活習慣病対策の一角を占めるであろう。また二〇〇〇年からスタートする介護保険制度でも、四〇~六四歳のAが介護を受けることのできる一五疾患の一つに、骨粗鬆症による骨折が入れられた。このように、国、地方自治体ともに保健・福祉の側面から骨粗鬆症にとりくもうとする姿勢が、徐々に強まってきているといえる。