マスメディアと企業のとりくみ

 

 

 最近では書店の医書コーナーにも、骨の健康や骨粗鬚症に関する書籍がつねに何冊かならぶ ようになった。また、健康関連雑誌にもしばしば骨粗鬆症の病態や予防法についての記亊がのせられ、企業内診療所や検診匳関で配布されるパンフレッ卜にも骨粗鬆症がとりあげられている。このような一般国民の関心の高さに呼応する形で、マスメディアを通しても骨粗鬆症の予防・治療法の普及がなされている。一〇年前には、骨粗霧症に関する一般情報誌を通しての情報はわずかであり、二〇年前は皆無にひとしかった。このように短い期間で急速に知識がひろまった疾病は、感染症をのぞいて他にはない。生命にかかおる腸管出血性大腸菌0157や狂牛病と同様に、ひろくマスメディアを通じて伝えられる骨粗鬆症は、骨折により生活の質をいちじるしく低下させることはあっても、死を早めることは少ない。それにもかかわらずマスコミの机上にのぼるのは、最近の日本人が、そして、その日本人の気もちを感度よくとらえる

 

マスメディアが、生命と同等に生活の質を重視していることの証だともいえよう。

 

 日本の医療制度も、これらの日本人の意をくみとっている。一九四八年以来、医療は診療所や病院の中において救命・延命を科学的にかこなうことを重視してきたが、一九九三年に施行された第二次改正医療法では、適した場所で適した医療をおこなうことと、としている。すなわち、延命や救命だけではなく、在宅などを含めて、看取りの医療の実現など、看護体制を重視した医療へとシフトしている。このような流れのなかで、長命を真に享受するために、骨折など

がもとで病気がちとならないようになど、保健・医療の連携がすすめられている。これらの方向性をつくるのに、マスメディアの支援が大きな役割をなしている。

 

 製薬会社など多くの民間企業がカルシウムを含む薬や健康食品を発売し、牛乳普及協会や牛乳・乳製品に関係する業界なども自社製品の販売促進とともに、骨粗鬆症・骨折予防に関する知識の普及・啓発にとりくんでいる。これは、骨のミネラルの主成分の一つであるカルシウムの摂取量不足が日本人の食生活にみとめられることが、一つの要因となっているものの、社会貢献をめざす企業の姿勢にもよっていることを忘れてはならない。