言語サービスの充実に向けて


1. 臨時的対策から継続的施策への転換

在住外国人緊急支援対策事業は、臨時的な対策であり、一般的には外国人住民対象のものでした。しかし、そこから見えてきたことは、翻訳サービスが一部の外国人住民だけに恩恵を与える者ではなく、地域社会全体に調和と新たな活力をもたらす可能性を持っているということです。よって、今後県及び市町村は、地域社会がますます多分化的な状況を増しつつあることを認識したうえで、言語サービスの基本的な考え方と中長期的な計画を施策の中に盛り込み、その充実に向けた取り組みを継続的に行っていくべきであると考えます。

2. ソーシャルサポートネットワークの形成による多元的サービス提供

特定のセクションが、特定の領域だけでのサービスの提供に終わるのではなく、外国人住民の翻訳サービスをトータルに考える視点が必要です。たとえば、市役所が出す乳幼児健診の通知文について、日本語で理解できない外国人住民に対して、市役所があらかじめ翻訳文を添付する、コミュニティ通訳が相手の理解できる言語で説明をする、日本語教室で通知文に出て来る漢字の読み方が学習できるようにする、といった複数のサービスが考えられます。外国人住民がサービスを選択できるようにしてもいいし、組み合わせることができれば一層効果的かもしれません。ただし、どこまでを行政の責任として行うか、どのサービスが有償であるべきかなどについての議論も必要になってくるでしょう。いずれにしても、自治会などの小さなコミュニティ、外国人グループ、ボランティア・NPO団体、行政などがそれぞれの特性や強みを発揮できるネットワークを日ごろから形成しておくことによって、こうした多元的なサービスの提供が可能になります。そのためには、ネットワークをつなぐコーディネーターの役割も大きなものとなるでしょう。

3. 地域住民参画による多文化共生のコミュニティづくり

外国人住民の立場に立った利用しやすい翻訳サービスを提供することによって、外国人住民の自主的なコミュニティへの参加が促されるようにすべきです。そうすることによって、地域住民同士の顔の見える関係づくりが進み、多文化共生のコミュニティづくりにつながっていきます。一方が支援する側でもう一方が支援される側という関係性が固定化しないように、新たなコミュニティ創造の担い手としての意識が双方に醸成されていくようにすることが肝要です。