衣服・履物・杖の使用で転倒防止

 

 

 以上が、転倒しやすい身体の状態であるが、そのほか、草履をはく高齢者や、足もとがからみやすい服、とくに和服を着ている高齢者は、洋装を好打人より転びやすく、衣服の条件も転倒に関係することがわかっている。一方、環境についても研究がはじまっており、浴室、階段、玄関口などの構造や、家屋内の段差、明るさなど、転倒を生じさせる要因がいくっが指摘されている。

 

 骨粗鬆症治療薬の服用と、高齢者本人への転倒防止や家屋改善の指導との両者は、高齢者の骨折を減らすのに同等の貢献をするとされているので、医療・保健にたずさわる医療関係者も転倒防止に力を入れるべきであろうし、高齢者自身ができることから自分でとりくむように支援することが大切である。転倒を引きおこしやすい病気については、可能なかぎり良い状態に治療・コントロールし、薬の服用中にめまいやふらつきが生じるようであれば、医師に相談することが望ましい。

 

 とはいっても、身体機能は歳とともに徐々に低下して、転びやすくなるものである。そこで、私たちのダルトフが老人ホーム入居者一四一人について調べたところ、散歩の習慣が身体機能の低下を防いでいることがわかった。散歩の習慣をもつ高齢者は、背中がよく伸びており、太心もの筋肉が強く、膝の動きも良いことがわがった。さらに、散歩の習慣は骨を強くすることも証明された。背中がよく仲びていることは、ふらつき防止に役立ち、膝の動きが良くて下肢の筋力が強いことは、ふらついたさいの転倒防止に役立ち、そのうえ幄が強くなっていれば、たとえ転倒しても折れにくいことになる。このように、散歩など安全で低強度な運動の習慣が骨折を予防することは、いくら強調してもしすぎることばないだろう。

 

 その他、歩きやすい服装、すべりにくい足もとなども転倒防止に役立つであろうし、天候の悪い日の外出や、ぬがるんですべりやすい道の歩行を避けるなどの注意もしたい。さらに、家の中を明るくする、階段や浴室の手すりの設置、段差の解消など、手のつけられる部分にたいする工夫で、転倒を防止したい。しがし、何といっても有用なのは杖の使用であろう。骨を強くするのにもっとも有効な散歩などの運動が、がえって骨折をまねいて寝こむような事態になっては逆効果であるので、適した杖を使っての散歩をすすめたい。