有用なプロテクターの装着

 

 

 

 このような注意をしても、しばしば転倒する高齢者が、痴呆のある場合などにみとめられる。

痴呆を有する高齢者が自宅にじっとこもっているように仕向ければ、体のはたらきが弱まり、次項で説明する症候群が出てきて、寝こむ原因となる。といっても外出させると転倒してしまうのでしかたがないなど、家族の悩みはつきない。このような場合は、臀部に肩バイトのようなクッションを入れたパンツを装着すると有効であることが実証されている。プロテクターはデンマーク、イギリスなどですでに使われており、これを装着した二月七人の高齢者は、装着しない四一八人の高齢者にくらべて、大腿骨頸部・転子部骨折の発生率が約一。一分の一に減ったとの報告もある。

 

 以上のことから、高齢者の骨折を少なくするためには、根気よく骨粗鬆症治療薬を服用して骨折頻度を約半分にすること、転倒防止の指導を本人および家族にたいしておこたって骨折頻度をさらに半分にすること、そしてプロテクターを装着して骨折頻度をその半分にすること、の三段階がある。以上のような現在おこないうるすべての骨折予防策を駆使すれば、高齢者の骨折割合を八分の一に減らすことができる。これは、わが国で毎年約九万一〇〇〇件は生じていると推定されている大腿骨頸部骨折を約一万件余りにできる計算となるのである。