双方向リンクシステムを与えたブログのトラックバック

 インターネット大陸というのは、アルバートトラズロという米ノートルダム大の教授が、『新ネットワーク思考  世界のしくみを読み解く』(NHK出版、青木薫訳)という自著で説明したインターネット世界の構造のことだ。

 ヤフーやMSNなどの巨大ポータルサイトで形成されている中央大陸が真ん中にあり、その両側にIN大陸とOUT大陸がある。IN大陸はポータルサイトへのリンクが張られているサイト群で、たとえば人気のある個人のホームページなどがそうだ。そうしたホームページにはヤフーやMSN(中央大陸)へのリンクが張られているけれども、ヤフーやMSNからはそうした個人ホームページにはリンクが張られていないから、逆に戻ることはできない。

 またOUT大陸はポータルサイトからリンクされている企業などのサイトで、中央大陸からはたどり着くことができるけれども、いったんOUT大陸に入ってしまうと、そこから中央大陸に戻ることはできない。ヤフーでは企業サイトが紹介され、リンクが張られているが、企業サイトからはヤフーにリンクが張られていないからだ。

 そしてこれらの大陸以外に、大陸とリンク関係がない孤立した島々がある。どこへもリンクが張ってなく、そしてどこからもリンクが張られていない。どこにでもあるような個人のホームページは、ほとんどがここに含まれる。

 そして世界中に存在するホームページの四分の一は、これらの孤立した島々になっていると考えられている。

 前掲の本で、バラバシ教授はこう書いている。

 〈現実には、すべてのウェブページが互いに連結されているわけではないのだ。どのページから出発しても、到達できるのは全ドキュメントのわずか二十四パーセントほどにすぎず、残りのページにはサーフィンによってはたどり着けないのである〉

 インターネットは双方向だと言われ続けながら、実はまったく双方向ではなかった。双方向どころか、大半の個人のホームページが孤立してしまっていたのが実態だったのだ。

 そしてこうした孤立が生じてしまったのは、インターネットのホームページにおける「リンク」というシステムが、常に一方向だったからだ。

 そこに登場してきたのが、ブログだった。ブログは先ほど書いたように、

 「双方向リンクシステム」

 とでも呼ぶべきトラックバックという仕組みを備えていた。これによって世界中のホームページはお互いにつながり合うことが可能になった。

 つまりは孤立していた島々が、トラックバックによって中央大陸やOUT大陸ともつながることが可能になったのである。これはネッ卜世界のあり方を根底からひっくり返す、新たなパラダイムの出現だった。

 ブログの持つ重要性は、トラックバック以外にもあった。

 それはブログに書かれた記事は、検索エンジンにとても検索されやすいということだった。わかりやすく言えば、ブログの日記や記事は一本一本が独立したホームページのような形式になっている。検索エンジンはこうした構造のホームページを好むから、結果的に検索エンジンにブログは引っかかりやすい。個人のブログに書かれた内容であっても、企業のホームページと同じ程度に検索エンジンに取り扱われるようになったのである。