個人HPへの広告掲載を可能にしたアドセンス

広告媒体の爆発的増加:ブログの登場

 グーグルは広告モデルをアドワーズからアドセンスヘとさらに拡大した。これによってグーダルが持つ広告モデルの意味はさらに広がり、インターネット世界への影響もさらに深化した。

 いったい何をどう変えたのだろうか。

 広告主にとっては、アドセンスが登場したことで、広告を表示できる媒体が爆発的に増えた。

 これまでインターネッ卜の広告といえば、ヤフーなどの大手ホームページに高いカネを払ってバナー広告を載せるか、あるいはグーグルやヤフーの検索エンジンでキーワード広告を買うしかなかった。媒体は限られていたのである。

 ところがアドセンスは、個人のホームページに広告を掲載することを可能にした。個人のホームページはブログなども含めれば、世界中に無数に存在し、その数はますます増え続けている。これらのホームページすべてにアドセンスによって広告を表示できるようになれば、その広告効果は計り知れない。

 一方、ホームページを運営している個人にとっては、少なからず広告収入が期待できるようになる。これまでインターネットのホームページで一般的だったバナー広告は、企業などが開設する大手ホームページにしか配信されていなかった。アクセス数が多いポータルサイトや大企業の公式ホームページでなければ、広告効果が期待できないと思われていたからである。

 ところがアドセンスによって、個人のホームページにも広告を表示することができるようになった。しかも広告の内容は、ホームページに書かれているコンテンツに沿って自動的に更新される。運営者個人は何も努力しなくても、好きなことを書いて人々に発信しているだけで、広告収入を得られるようになったというわけだ。

 これは大きな可能性を秘めている。

 なぜなら、このアドセンスの登場によって、個人のホームページは初めて収入を定期に得ることができるようになり、

 「情報を発信する」「インターネット上で文章を書く」

 という行為に対して、報奨金が与えられるようになったからである。

 情報交換する「土俵」

 これによって、ますますインターネットの双方向性は高まることになった。個人も企業も非営利組織も政府も、いずれも同じ土俵でホームページを作成し、情報発信し、お互いに情報を交換するような「土俵」ができあがってくることになったのだ。

 振り返ってみれば、インターネットは一般社会に出現した一九九〇年代半ばから、「双方向のメディアだ」と言われ続けてきた。

 しかし現実には、必ずしもそうではなかった。

 ホームページ文化の中心は大企業やマスコミとなり、個人の運営するホームページは大きな力を持つには至らなかったのである。つまるところ新聞やテレビ、雑誌などの従来のマスコミと同じように、インターネットも「片方向」になってしまっていたのだ。理由はさまざまあるが、ホームページを持つということに対する技術的なハードルが高かったことが大きかったと考えられている。要するに、素人にはホームページ開設は敷居が高かったのである。

 そうした状況が劇的に変わってきたのは、二〇〇二年ごろからだった。

 ブログが出現したからである。