地方の中小企業に光を当てるグーグルの広告戦略

 グーグルペースにも、個人が発信する案内広告以外に、自動的に企業の広告を表示させることができる。最近はグーグルはアドセンスを発展させ、紙の雑誌に広告を配信するサービスさえはじめている。ありとあらゆるメディア、コンテンツに広告を掲載することをグーグルは狙っているわけだ。

 無料であっても、効率的な広告をそこにはめ込んでいくことができれば、安定的な収益を上げることが期待できるようになる。

 それどころか、広告を掲載する媒体は多ければ多いほど収益も大きくなる。つまりはグーグルの戦略は、こういうことなのだ。

「いかに多くの媒体を獲得し、それらの媒体にいかに多くの広告を表示するか」

 というものだ。

 従来の広告代理店は、大手企業からできるかぎり広告をたくさん集め、できるだけ高価な媒体に売るというのが最高の戦略だった。全国ネットワークのテレビのゴールデンタイムで高い視聴率を誇る人気番組に、トヨタ自動車資生堂松下電器産業といった誰でも知っている超優良企業のテレビCMを売るというのが、もっとも主要なビジネスだったのである。これは電通にしろ博報堂にしろ、あるいは他の大手広告代理店でもその戦略はほとんど変わらない。だから広告代理店の社員にはインターネットが登場してきたときも。

 「あんな単価の安い、つまらない広告は王道ではない」

 と言ってはばからない人は少なくなかったし、現在でもネット広告の担当者は大手広告代理店の中では比較的低い地位に見られてしまっている。またその態度は広告主に対しても同様で、大手代理店は地方の小さな店舗や零細企業などはほとんど相手にしていない。ところがグーグルはその常識を、根底からひっくり返した。

「少数の大手広告主ではなく、膨大な数の地方の零細企業

テレビや有名雑誌などの高価な媒体ではなく、ささやかな個人のホームページや検索キ

 という転換を果たしたのである。

 これはまさに「ロングテール」的な考え方だ。塵も積もれば山となる、と言い換えてもいいかもしれない。今まではみんなが、

 「塵なんかゴミだ、山を狙わなければならない」

 と言っていたのが、グーグルは、

 「いや、山なんか手に入れなくてもいいんだ。塵をたくさん集めていけば、じゅうぶんに山以上の存在になれるんだから」

 と人々に発想の転換を迫っているということなのだ。

 いずれにせよ、そうやってグーグルは塵を集め、その結果として莫大な広告料を手にすることができた。

 そしてグーグルはそれら広告料金による圧倒的な資金力にものを言わせ、次々と無料のサービスを立ち上げることになる。そしてそれらの無料サービスが、最終的にはすべて広告の媒体となっていくのである。

 しかしこの戦略は、単なる一企業の戦略にとどまらない。グーグルがこうした戦略を採ったことによって、インターネットの世界も大きな影響を受けるようになったからである。

 グーグルがアドセンスアドワーズによって作り上げつつある、インターネット世界の変質がある。