日本の高齢者医療の今後について

 いまのお年寄りは、お金を結構もっておられる方が多いと思うのですが、それを人生を最期まで安心して送れるように使っていただきたいと思います。有料老人ホームを買っても決して安心はできないわけですから、老後の蓄えをご自分の最期をハッピーにするために使っていただきたい、子どもに残してやろうなどとは考えなくてよいと私は思うのです。

 日本はいま、高齢者の問題や医療を含めて、国のシステム全体を構築しなおさなければいけない時期に来ています。いろいろ不安視されていますが、日本人は勤勉だし、高い技術力をもっていますし、なんとか工夫しながら新たなシステムをつくっていくだろうと私は思っています。

 この国の認知症ケアとか老人の医療や介護は、欧米のドライさとは違ってウェットですから、アジアのモデルになるだろうと思っているのです。中国にも老人病院が建ちはじめているし、韓国にもできていて、そういった国の方々が病院 に見学にやってきます。認知症になったお年寄りにも人権があるというところにまではまだケアの意識が広かっていないせいか、中国や韓国では身体拘束は当たり前のようになされているけれども、これからよくなっていくと思います。この、アジアのモデルとなりうるということも、日本は意識していいのではないかと思うのですね。

 介護現場で働く人の問題にしても、平成二十年五月にインドネシアからの看護師や介護福祉士の受け入れを決めましたが、どうなのかなという危惧が私にはあるのです。英語圏であれば別ですが、日本語は特殊な言語だし、コミュニケーションを図るのが難しい。介護や医療の領域で、言葉の壁というものはとても大きな障害になるのではないでしょうか。それならば介護ロボットのほうがいいのではないかという気がします。

 じつは、先進国でお年寄りを自国民だけでケアしているのは、日本人だけなんですよ。日本でもこれからはアジアの人たちにやってもらおうとしているのだけれども、一方で、これから日本では企業倒産が増えていく可能性があります。ケアワーカーの応募者は転職組の人たちが少しずつ増えているのですが、アジアの人たちの受け入れを進めていくと、そういった人たちの転職先が減ってしまうことになります。

 ついでに言っておきたいのは、デンマークなどでは、ケアワーカーがとても誇りをもって仕事をしているということです。ああいう姿を見ると、日本でも誇りのもてる職種になってほしいと感じますね。生活を維持するための経済的な保障はもちろん大事なのですが、お金だけではなく、厚生労働省にはそういうメンタルな問題も真剣に考えてほしいと思います。