性格のタイプにより脳卒中の発生率は異なるのか

 性格と脳卒中の関連はたびたび話題になります。いわゆるワーカホリョクなタイプ、すなわち、つねに時間を気にして焦り、仕事にも完璧を求め責任感が強く、また他の人と自分を比較して競争心の強いというような人を「タイプA気質」の性格といいます。今までに、このような「タイプA気質」の人は、心筋梗塞を発症することか多いという研究は数多く出されています。また、社会的に引きこもりの傾向のある人では、心筋梗塞か多くみられたとする研究もあります。

 では脳卒中はどうでしょうか。怒りっぽい、あるいは、くよくよと小さなことを気にするような性格はいかにも脳卒中の発疱リスクと関連がありそうですか、これに関する研究は、実はきわめて少ないのです。たとえば、動脈硬化の徴候、あるいは高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙のリスクのうち少なくとも一つを有する三四人の患者さんの性格と、エコー(超音波)検査で頸動脈の動脈硬化との関連を調べた結果、怒りっぽくて攻撃的な人に有意に病変か多くみられたとする報告か出ています。しかしこの場合、被験者の数か少なく、また脳卒中に関連するほかの因子を除外し切れていないこと、エコー検査で確認した頸動脈の動脈硬化と脳卒中の発症との関連が明らかでないといった問題かあります。

 また、別な報告では、脳梗塞の急性期の患者さん二二四人と健康な人一〇〇人を対象とした質問紙法と呼ばれる評価方法での性格の分析から、緊張しやすい性格の人に太い血管か閉塞するタイプの脳梗塞か多く発疱していることがわかりました。しかし、この研究も母集団の人数が少なく、また脳梗塞を発症したあとに、患者さん自身に自分の性格を分析してもらっているところに問題かあります。なぜならそうした時期には、患者さんも気分か落ち込んでいたり、発症の原因を性格のせいとする人もいるので、病前の性格を正しく反映しているとは考えられないからです。さらに、攻撃的な性格の人は不整脈を発症することか多いという研究報告もありますが、このような人に心原性脳塞栓が多いという疫学的な研究発表はありませんので、脳卒中の発疱と性格の関連については、心筋梗塞と性格の関連ほど明らかになっていないというのか、医学的には正しい認識のようです。