医療廃棄物の処理法とその環境破壊

 病院の環境を考える前に、病院環境が地域の環境にどのような影響を及ぼしているかを見ていく必要がある。病院清掃委託業者の新聞に。捨てるゴミの向こう”という特集があった。その中に「なぜないのか、すみませんの一言」「処置も説明不足、たらい回し」という見出しがあり、大見出しには「安全を守る主人公として提携したいのに」とあった。掃除の人がゴミの中の注射針で手を怪我した事故に関しての記事である。「針は分けて缶に捨てることになっているのに、なぜゴミ袋に混ざっていたか、そのことが原因で起こった事故なのに、すみませんの一言もないのはどういうことか。患者さんのことで手一杯なのは分かっているけど、一緒に働く清掃の人間のことなんか関係ないと考えているのではないでしょうか」「あの針は点滴のビン側の針だから安全だということなのだろうが、きちんと説明されない。こんな事故が起きたことが病院全体に伝わっているのだろうか」と書いてある。

 このように、診療行為に伴う廃棄物が院内の人たちの安全に、いろいろな問題を起こしているだけでなく、どこにどのように捨てられるか、捨てられたものが、どのような経過をたどって、どう処理されているかということについて、医療従事者はあまり関心を払っていないのではないか。

 院内感染B型肝炎になった人たちの七七・五%が針さしによる事故である。これらの注射針を一番捨てる立場にいるのは看護師である。どのように廃棄物を捨てるかを正しく認識していないと、多くの大に迷惑をかけてしまうことになる。

 地域全体から見たときに、病院の汚染度はきわめて高いことも認識しておく必要がある。生体から出る感染源は消毒で処理できるが、検査試薬の廃棄による化学物質の汚染に対する関心は少ないのではないだろうか。バイオ(ザードという生物災害が臨床衛生検査技師一万二〇〇〇人の約〇・三%の人に発疱しているという。

 病院から出される廃棄物は可燃物、不燃物ともに大量で、資料によればウイルス汚染したプラスチック容器が1ヵ月二㎏、ウイルス汚染の危険のある注射針が1ヵ月〇・五陬、水銀体温計が年間五㎏、洗剤なども含め環境を汚染、破壊するものをかなりの量出していると思う。

 ここで問題にしたいのはディスポ製品である。一九六〇年代のはじめ、特に高度経済成長が始まり、石油化学製品の開発に伴い、ディスポ製品の量産、普及が始まった。ガラス瓶がプラスチック容器に変わり移送や携帯しやすいメリットにより、ベトナム戦争で米軍がこれを活用した。ところがベトナム帰りの兵士たちが、原因不明の肺出血で亡くなるという記事がベトナム戦の終わり頃から見られるようになる。ダナン肺と呼ばれたこの症状の原因が、プラスチック製品を人体に挿入しやすくするための可塑材による肺静脈の血栓を起こすものであったということも、続けて報道された。

 わが国でもこの可塑剤(フタル酸エステル)を入れたプラスチック容器を使って動物の飼育をしたり、あるいは魚や昆虫を飼育している生物学者の間から虫や動物、魚の奇形についての報告が同じ年代にされている。

 現在も、体内に挿入するチューブ類がメーカーからたくさん出ているが、本当に安全なのだろうか。重症の人ほど体内に多く留置するわけである。我々は、感覚が鈍くなって便利なものは便利だと使っているが、その陰には、安全性を阻害する要因があるのではないかということを考えながら、ものを使い、あるいは捨ててほしいと思う。

 次に、看護用品の中でも問題のある紙おむつについて考えてみたい。紙おむつの中に敷かれているビニールは、五〇〇年経たないと地球に還元しないといわれる。それを私たちは平気で、便利だからといって使っているが、反省しなければいけないと思う。

 では布おむつにしたらどうか。使う水の量と洗剤による汚染、それと紙おむつを使ったときの危険性との比較について、きちんとした研究をして、問題提起していかないといけない。患者の療養環境を整えるという視点と同時に、地域の、地球の環境を少しでも汚さないための、医療従事者としての環境問題についての役割を自覚しないといけないと思う。