ストレスに弱い人は脳梗塞になりやすい

ヒトにおいて、マクロの視点で「ストレスが脳卒中有意に上昇させる」と本当にいい切れるのでしょうか。

 科学者および医学者ぱ、この点に関して非常に慎重です。

 ストレスは、肉体的・精神的に影響を及ぼすだけでなく、食事や睡眠を不規則にしたり、社会活動を制限したりすることにより、新たな健康問題を生じさせます。現実にアメリカでは収入の低い世帯で脳卒中の発症が多かったとする研究発表もあり、脳卒中を考えるときに社会経済的な側面も無視できません。つまり、ストレスは私だちか想像する以上に、さまざまな形で体に影響を及ぼしていると考えるべきです。ストレスと脳卒中の直接の関連はどうでしょうか。

 二〇〇一年に発表されたスウェーデンでの研究によると、高血圧の男性を対象として、ある困難な仕事を繰り返し行ってもらい、ストレス適応度を測定するテストを利用し、その人がどれくらいうまくストレスに適応できるかでグループ分けして、その後平均約一〇年間にわたって追跡調査を行ったところ、適応度の低い、ストレスを感じやすい男性に脳卒中が多く発症していることがわかりました。

 またデンマークでは、男性五六〇四人、女性六九七〇人を対象とした質問法による心理テストで、日常生活における緊張感、神経質、焦燥感、不安感、不眠感などのストレスの程度と頻度を自己評価してもらい、その後平均一三年間追跡調査した研究かあります。すると、高度なストレスを毎週感じている人に、致死性の脳卒中の発症リスクか高いことか明らかにされました。

 このような研究では、それぞれの群での高血圧の有無や喫煙習慣の有無、運動量などの影響をなくして検討しているため、ストレスそのものか脳卒中発疱のリスクを増大させる可能性か示唆されたわけです。

 わが国でも、二〇〇九年に発表された男性三一九〇人と女性三三六三人を対象とした研究で、仕事上で高度なストレスを感じる男性は、ストレスの少ない男性よりも二倍以上脳卒中のリスクが高いことが示されました。

 仕事上のストレスには国民性や仕事観、休暇、労災保険の適応などや、福祉制度といったことも関連してくると考えられ、日本人のデータに基づいたストレスと脳卒中の関連が明らかとなったことは注目されます。

 特に、血圧や血清コレステロールなどの数値に直接の変化がなくとも、ストレスを減らすと、脳卒中が減少する可能性か示されており、これは大変重要なことです。仕事上のストレスの軽減は個人の努力のみでは難しい面もありますので、職場や社会か労働環境の改善を推進していく必要がありそうです。