基本は良肢位での固定

 

 

コーレス骨折ではフォーク背状の変形をしめすので、指を思いきり手のひらの方向、かつや骨柤館症と高齢者骨折や小指の側へ斜めに引っぱると同時に、骨折端を整復する方向に圧迫することにより治す。これらの操作はレントゲン像で観察しなからおこない、うまく整復されれば前腕から指までをギプスで固定するが、そのさい多少は整復位からもとのフォーク背状にもどってしまうことがある。あまりにも手の甲方向へのフォーク背状の変形が大きい場合には、手首が手のひらの方向に曲げられないために使い勝手が悪くなるが、二五度ぐらい手の甲の方向に曲がっていても、生活をする上で不自由を感じないようである。

 

 保存療法では、手を思いきり手のひらの方向に引っぱり手首を曲けた状態(掌屈位)固定をするが、その固定はせいぜい二週間ぐらいの期間にしておくほうがよいとされている。二週間後にはそっと手首を手の甲のほうへ曲げて(背屈位サギプスを巻きなおす。このようにせず、もし骨癒合の完成する円週間の全期間にわたって、手首を手のひらの方向に曲げて固定したままでいると、その位置で固まってしまい、その後の使用に不便をきたすことがある。

 

 私たちが手や足を使うさいや、ふつうにしているときの関節の角度を観察してみると、手首であれば二〇度ぐらい背屈位、指は握った位置、肘は九〇度位で使用していることが多く、歩いているときには、足の裏の方へ曲げる底屈位と足の甲の方へ曲げる背屈位とのちょうど中間の・底背屈位、膝は一〇度屈曲位にしていることが多い。したがって、これらの角度でもし関節が固まったとしても、不自由さは少ないことになる。このような不自由さの少ない関節の角度を良肢位というが、関節を固めてしまうがもしれないギプス固定は、良肢位でおこなうのが基本である。しかしコーレス骨折の場合は、殼大限に掌屈位、といった不良肢固定をしないと整復ができないので、やむなくこれをおこなうが、骨折部がすれなくなるギプス固定の後には、良肢位にもどして固定しなおす必要がある。

 

 多くの関節では屈曲する方向の筋力が強いため、屈曲方向の拘縮をおこしやすく、その関節をまっすぐに仲ばすのにひと苦労することが多い。しかし、指の関節のみは、指を曲げた状態で関節周囲の靭帯が伸ばされ、指を伸ばした状態で靭帯が縮か構造になっている。したがって、ギプス固定をするさいは、指関節を曲げて靭帯を伸ばしておかずに、指関節を仲ばしたままで固定すれば、その後関節が曲からなくなってしまう。曲がって固まった指を伸ばすのはかんたんだという点て、指の関節は他の関節とは異なっている。したがって、骨折後一週間目に手首を背屈位二〇度ぐらいにして固定しなおすさいには、指の関節のはたらきを保持するため、指の関節を屈曲位万固定するか、仲ばしたり曲ぱたりできるように自由にしておかなければならない。これらの点に留意すればコーレス骨折の治癒後に強い拘縮をおこすことは少ないので、肩関節にたいする体操のようなものは不必要となる。ただし、前腕全体にギプスを巻いてしまうので、中で神経や血管が圧迫されて、指にさかった感じがなくなったり、手や指の筋肉が死んだりすることもありうる。したがって、痛みがつづく、指がしびれる、などがあれば、ギプスが神経や血管を圧迫していないかをチェックする必要がある。