困難をともなうリハビリテーション

 

 人工骨頭置換術後でも、骨接合術後でも共通していることは、手術後は可能なかぎり早く座位、立位へと誘導する、骨折のない三本の手足の手術をする前からよく動かし筋力を保っておく、などの早期リスビリテーションが、身体機能を低下させないために必要だということである。そして、手術から一~二か月後には、その患者さんの骨折前の能力におうじた最大限の能力をつけて退院していただくことになるが、手術後のリヘビリテージョンが順調にすすむ患者さんは約半数にすぎない。その理由は、骨折部の状態によるよりも、合併症や木人の意欲のなさにより、訓練が思うようにできなかったり、効果があがらなかったりすることによる。

 

 老人専門病院の整形外科では。この二十余年で二〇〇〇例の大腿骨頸部・転子部骨折を治療しているが、その病院に来院された大腿欸頸部骨折の患者さんの七四%に心電図異常が、三六%に癲呆がみられた。また、血液中のタンパク質が少ないことや、高血圧、膀胱炎、貧血などは、いずれも二〇%近い骨折患者さんにみられ、まったく合併症をもたない大腿骨頸部・転子部骨折患者さんは一割にも満たなかった。

 

 手術後などにリハビリテーションがうまく進まず予定の30%以上も訓練期問が長びいたり、以前にくらべて治療終了後にいちじるしく身体機能が低下する症例が、約五〇%にみとめられたが、骨折のタイプ、年齢、性別などは訓練の順調さに関係しなかった。むしろ合併症の内容の方が開題で、順調例にたいする順調でない例の割合は、痴呆患者さんで四倍、糖尿病患者さんで三倍、呼吸器疾患患者さんで二・六倍であった。

 

 合併症の内容と同時に、転倒・骨折を生じたかも回復に影響を与えていた。病院入院

中に骨折した例では約四分の二に、老人ホーム人所中に骨折を生じた例では約三分の二に、順調に訓練がすすまない例がみとめられた。