日本で過度なDTC(消費者直訴広告)が認められていない理由


医薬品の最終ユーザーは患者です。ただし、どの医薬品を使うかはユーザーではなく薬のプロである医師か薬剤師が決めるものです。医薬品企業のマーケティング活動は医師や医療機関を対象としたものであり、MRは自社の新薬や既存薬に関する情報提供を行っています。こうしたMRによる情報提供活動を、日本では学術活動と呼んでいます。

米国ではこうした学術活動のほかに、一般消費者に向けて個別製品に関する情報を直接的に訴えるDTC(消費者直訴広告)が認められています。日本では医薬品企業のイメージ広告はできますが、個別製品名を出すことはできません。

バイオックスの副作用問題の前後から、過度なDTCによる消費者誘導は避けるべきという意見が強まりました。バイオックスも、DTCが奏功してブロックバスターの一つになったと考えられたためです。
もちろんバイオックスが優れた消炎鎮痛作用を持っていたことも事実であり、一般消費者へ情報を広く提供するDCTは一定の役割を果たしています。こうしたなかDTCに対する過度な規制は必要ということで、PhRMAが巣新薬となり現在は発売から1年未満の新薬のDTCは自粛となっています。

DTCの自粛については、医薬品に対する安全性の懸念と無関係ではありません。新薬には10万分の1の確率で未知の副作用が出る可能性があります。これを5万分の1にしないために、副作用の情報伝達や対応策などのセーフティネットの充実が重要です。

副作用問題に関する過度な報道や間違った情報伝達によって、新薬開発が後手に回ったり、必要な患者の手に届かないという事態は避けなければなりません。