骨粗鬆症対策は健康づくりの要

 

 

 健康づくりの方策としては、もともと健康な人が運動・栄養・休養の適正化をよりいっそう心がけて、健康増進をし、体力を維持向上させる、といった方向性がある。もう一つの方策として、肥満ぎみ、血鵈が高め、痛風発作を経験した、などの症状や病気をもつ人が、それにこりて一病息災とばかりに、病気とうまくつきあいながら他の多くの病気から遠ざかり、健康的 な生活を送る、といった方向性もある。これら二つの方向性のうち、できれば前者の健康増進、すなわち病気の一次予防が望ましいとされているが、健康な人がさらに健康になろうといった気運はなかなか生まれないものである。また、より健康な毎日をと、健康づくりが生活の目標になってしまうことは避けたいものである。健康な体とは、人間が社会で活躍するのに役立つ道具であり、健康が人生の最終目標であってはならないのである。したがって、多くの人たちは何らかの病気や体調を気にかけながら、その病状を指標にして健康づくりにはげんでいることが多いが、これは健康をくずしたときこそが、健康づくりの最大のきっかけになるからである。

 

 糖尿病・高脂血症・高血圧・肥満を死の四重奏と表現する人心いるが、これら生活習慣病については、いすれも散歩などの軽い運動により改善が可能であることがわかっている。そして、運動は骨粗鬆症予防対策の中でも、もっとも重要で有効な方法といえる。カルシウムをたくさん含んだ食事をとる食事療法は、骨祖鬆症の予防に有効であると同時に、血圧を低下させる効果があることは、すでに述べたとおりである。そして、日本人は多様な食品がらまんべんなくカルシウムを摂っており、小魚・海藻・緑黄色野菜などカルシウムの多い食品の摂取は糖尿病・高脂血症・肥満を予防するのに最適の食品でもある。しかし、これらの素材を調理するさいには、砂糖や塩分を多く使う傾向があるので、だしをよく効かせたり、香辛料を活用したりすることにより、薄い味つけをすることが大切なポイントとなる。最近ではおそうざいを店で買うこともできるが、これら店頭のおそうざいは、日もちをよくするために砂糖や塩分を多く使っていることが多い。これらにたよらずに、薄味の料理を温かいうちに食べる、そのために毎食の料理をつくる必要がある。日常こまめに立つ、歩くなどの活動性向上も骨粗鬆症予防に役立つが、これらちょこまかした運動は、糖尿病や高脂血症・高血圧・肥満の予防にも役立つ。

 

なお高脂血症や肥満の原因として牛乳・乳製品を嫌うことは偏見に近いといえよう。もし、より脂肪の少ない牛乳でカルシウムを摂取しようとするならば、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳というものもあり、これらの牛乳のカルシウム含有量は一般の牛乳よりも多いことはあっても少ないことはない。

 

 軽い日光浴は、骨粗鬆症予防のために有用であるが、日光浴をしながら体を動かすことは、糖尿病・高脂血症・高血圧・肥満の予防のためにも有用である。日光浴で増えるビタミンDは抗がん作用や、慢性関節リウマ子などの炎症をおさえる作用があるとされており、カルシウム摂取量増加は大腸がんの発生率を上げるとの報告もある。こういったがん予防効果については断片的な研究成果であるため、骨粗鬆症予防はがん予防にもなると大上段にかまえるつもりはないが、少なくとも悪い影響がないごとに確かである。日光浴の皮膚がん発生促進作用についても、日焼けするようにすすめているわけではなく、日常あびる範囲内であれば、私たち黄色人種にとってそれほど危惧することはない。むしろ総合的な効果として、日光浴は人体に有益であるといえる。

 

 以上のことから、骨を強くする日常生活は多くの生活習慣痼を予防するといえよう。最近の健車ブームにより、いろいろな病気の恐さとそれらの予防法を私たちは耳にするようになったが、どの病気を標的にして健康づくりにはげめばよいのか、選択に困ることもしばしばであろう。そこで昨今、国民の関心がもっとも高い、骨粗鬆症予防対策をとることをおすすめしたい。骨粗髷症を予防するために運動・食事・日光浴の三つに留意すれば、骨を強くするだけでなく、糖尿病・高脂血症・高血圧・肥満といった死の四重奏にたいしても有効である。そして、糖尿病の指標となる血糖値、高脂血症の指標となる血液中コレステロール値、高血圧の指標となる血圧、肥満の指標となる体重は、いずれも適正な値があって、それらの値が低ければ低いほど健康とはいえない。これらの病気では、正常値より上方に越えても下方に越えても病気で、そのうえ正常値の中で、より健康な値というものがなく、病気からずっと遠ざかったスーパ―健康といった状態をつくることができない。つまり、健康のたくわえがさがない。しかし骨粗鬆症においては、同年代の健康な人の骨量、それは高い骨量、さらにはスポーツマンのように高い骨量、といったように、スーパー健康の度合が数値でわかる疾患でもある。ただし、骨密度が骨の輪郭におうじて均一に上昇することが大切で、局在したり、骨にトゲが生じて骨硬化・肥厚を生じるような骨密度増加は、むしろ有害である。したがって、局在する骨密度増加を生じないようなゆるやかな運動を継続しておこなうことが重要であろう。

 

 いくつかの留意事項があるにしても、骨柑鬆症予防は、骨量増加といった健康貯蔵を通して、健康体をつくり、それを確認できるため、生活習慣病予防の効果は骨粗鬆症対策の成果により判定できると断言しうる。そして昨今では、国民が骨粗鬆症予防に強い関心をしめし、健康講演会などでも、がんや糖尿病がテーマの時はそれほど人が集まらなくとも、骨粗鬆症をテーマにすれば満員の盛況を呈することがしばしばである。このことから、関心の高い骨粗鬚症予防を多くの生活習慣病予防の呼び水とし、骨を強くする生活習慣を通して人々を内科疾患からも遠ざけることが可能である。また、ある人が内科疾患からどのていど遠ざがっているかを計るのに、骨量はよい指標となる。

 

 このように、医学界、自治体、マスメディア、企業などから言ツクアでフの得られる骨粗鬆症予防は、多くの疾患予防の要となるにふさわしいとりくみであるといえよう。