数百の看護事故・急変・死亡事例の検討から得た教訓を整理すると次のようである。  ① 患者の事実に接近する観察は急変を予測し事故を防ぎうる。  ② 観察ミスの種類は、看護師の見すごし、見落し、および先入観によるものである。  ③ 観察に基づく判断の適否は技術の選択に重大な影響を及ぼす。  ④ 看護基準定型化の限界を無視または軽視することが事故・急変につながる。  ⑤ 生活行動援助の前後のバイクルサインの確認は、失敗を防ぐ決め于となる。  ⑥ 看護師の勤務体制や看護要員の数、看

              
数百の看護事故・急変・死亡事例の検討から得た教訓を整理すると次のようである。

 ① 患者の事実に接近する観察は急変を予測し事故を防ぎうる。
 ② 観察ミスの種類は、看護師の見すごし、見落し、および先入観によるものである。
 ③ 観察に基づく判断の適否は技術の選択に重大な影響を及ぼす。
 ④ 看護基準定型化の限界を無視または軽視することが事故・急変につながる。
 ⑤ 生活行動援助の前後のバイクルサインの確認は、失敗を防ぐ決め于となる。
 ⑥ 看護師の勤務体制や看護要員の数、看護を行う場、看護要員の質および労働条件などは看護の安全性を左右するうえで無視できない。
 ⑦ 医師の指示に対する看護師の主体的な対応、および医師とのコミュニケーション、チームワークの良否は、看護の質に少なからぬ影響をもたらす。

 ”安全性”とか、”安楽性”という言葉が、看護の世界では日常的に用いられてきている。だが、現実の臨床場面は、その言葉に意図される患者の状況や技術過程とはまだ程遠い状況かおることも事実である。

 概念の統一も十分ではないし、実践の量も不足しているため、必ずしも理論的に明らかになっているわけではない。しかし、患者の生命の安全を守り、患者が人間らしく生きていくことを可能にするような看護の実践の必要性は、臨床に働く看護師の願いでもある。少なくとも安全性や安楽性を阻害する条件の克服は、看護師が主体的に行っていかなければならない重要課題である。