良性の胃ポリープについて


「ポリープ」とは隆起したもの全体をいい、両性の場合も悪性の場合もあります。頻度の高い良性の胃ポリープには「過形成性ポリープ」と「胃底腺ポリープ」があります。このほか、良性のポリープには「胃腺腫」があり、悪性のポリープに「胃癌」があります。過形成性ポリープは、78%以上と高率でピロリ菌感染を伴います。胃底腺ポリープはピロリ菌感染のない胃粘膜によく認められるものです。

内視鏡で観察すると、過形成性ポリープでは、赤みが強く、しばしばびらんを伴います。胃底腺ポリープは、小さいものが多く、周囲の粘膜の色調とほぼ同じです。両者とも多発することがあります。

この二つのポリープは、内視鏡的な特徴以外に、病理組織で区別できます。経過を見ると、過形成性ポリープは増大することがあり、炎症を伴っており、稀ながら癌化することもあります。一方、胃底腺ポリープはほとんど炎症がなく、通常は急速に大きくなることも、癌化することもないポリープです。

従来、過形成性ポリープについては、おおよそ1cm以下のものは経過観察され、それ以上のものは内視鏡的な切除が検討されてきました。特に、2cm以上のもの、増大傾向のあるもの、貧血の原因となる場合などでは、切除による治療が良い方法と思われていました。ところが、ピロリ菌を除菌することでポリープが縮小あるいは消退することが報告され、注目されています。

実際に、除菌成功者の15例中12例で過形成性ポリープが消失したという報告があります。他の報告でも70~95%でポリープの消失または縮小があるとされています。通常は自然消失することは稀なので、除菌治療が過形成性ポリープに対して縮小効果があるのは明らかだと思われます。

したがって、胃ポリープがある場合には、そのポリープの種類は何か、ピロリ菌の感染はあるのかを確認して、そのあとの対応を考慮すべきです。具体的には、「胃底腺ポリープ」でピロリ菌が認められない場合には、安心して経過観察するだけでよいと思われます。一方、「過形成性ポリープ」でピロリ菌が認められた場合には、除菌治療を考慮するとよいでしょう。

ただし治療を急ぐような場合、具体的にはポリープが大きい場合、癌が疑われる場合、出血などを起こしている場合、あるいは除菌が成功しても増大するような場合には、内視鏡的に切除するほうがよいかもしれません。

また、職場の一種である胃腺腫についても、除菌で縮小する場合があることが報告されています。しかし、過形成ポリープのように除菌によって消失することは稀なので、現在では除菌治療の対象とは考えられていません。経過観察する場合もありますが、癌と紛らわしい場合があるので、内視鏡的に切除することを医師から進められることが多いのではないかと思います。

「ポリープとある」と言われる方は多いと思います。良性のポリープでもそれぞれ性格が違うので、同じように扱うのは適当ではなく、その患者に即した経過観察や治療の方針があってもいいのかもしれません。ポリープについて正確に理解し、また最近の知見を踏まえ、正しい対応をおとりになることをお勧めします。